遺言書の内容を考えよう!財産の分け方と気持ちの伝え方
- 2025.12.05

これまでのコラムでは、遺言書が大切な理由をはじめ、その種類と書き方についてお伝えしてきました。
今回は、いよいよ「遺言書にどんな内容を書くのか」という最も大切な部分についてご紹介していきます。 遺言書に記すのは、あなたの築き上げた財産の分け方、そして財産を遺す人への想いです。
誰に、何を、どう遺すか?遺産の分け方の基本

遺言書で重要なのは、ご自身の財産を「誰に、何を、どれくらい」引き継ぐかを明確に決めることです。
誰に(相続人・受遺者)
遺言書では、法律で定められた相続人だけでなく、お世話になった方、内縁のパートナー、あるいは慈善団体など、相続人以外の人や団体に財産を遺すこともできます。これを「遺贈(いぞう)」と言います。
財産を渡す相手を特定する際は、後々混乱が生じないよう、氏名だけではなく、生年月日や住所、続柄などを併記するのが一般的です。
何を(財産の特定)
財産を特定する際は、曖昧な表現だとトラブルの原因になる可能性があります。遺言書では、財産が一つに定まるよう、正確に記載することが不可欠です。
【財産の種類ごとの具体的な記載例】
・不動産(土地・建物):
登記簿謄本に記載されている通りの情報(所在、地番、地目、地積など)を記載します。
・預貯金:
銀行名・支店名・預金種別・口座番号を正確に記載します。
どう遺すか(分け方の指定)
「〇〇の土地を長男に、△△の預金を長女に」と具体的に指定する方法や、「全財産の半分を妻に、残りを子どもたちで均等に」と割合で指定する方法など、あなたの希望する分け方を具体的に記載しましょう。
「遺留分」に注意!残された家族の権利

遺言書で財産の分け方を自由に決められるとはいえ、全てを思い通りにできるわけではありません。
法律では「遺留分(いりゅうぶん)」という、兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保証されている遺産の取り分が定められています。もし、この遺留分を侵害する内容の遺言書を作成すると、トラブルに発展する可能性があります。そのため、遺言書を作成する際は、遺留分を考慮に入れることが大切です。不安な場合は、専門家にご相談しましょう。
遺留分については、別の記事で詳しく解説します。
「遺言執行者」を指定する重要性

遺言書を作成したら、その内容をあなたの代わりに実現してくれる「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」を決めておくことも非常に大切です。遺言執行者は、あなたの死後、遺言書の内容通りに財産を分けたり、不動産の名義変更や預貯金の解約といった手続きをしたりします。
遺言執行者がいない場合、これらの手続きに相続人全員の協力が必要となり、スムーズに進まない可能性があります。遺言執行者を指定しておけば、残されたご家族が複雑な相続手続きに戸惑うことなく、遺言の内容を実現できます。
遺言執行者は、相続人から選ぶこともできるほか、弁護士のような専門家を指定することも可能です。専門家を遺言執行者に指定すると、中立公正な立場で、正確に手続きを進めることができるのがメリットです。
「心の相続」を形に!付言事項の活用

遺言書は、財産の分け方を指定するだけでなく、あなたの想いを伝えるための大切なメッセージボードでもあります。そのメッセージの役割を果たすのが「付言事項(ふげんじこう)」です。付言事項は、法的な効力を持つわけではありませんが、あなたの感謝の気持ち、なぜそのように財産を分けたのかという理由、残された家族への願いなどを自由に書き記すことができます。
付言事項の具体的な記載例
・感謝を伝える:
「長年、連れ添ってくれた妻へ。あなたがいつまでも安心して暮らせるように、全ての財産をあなたに遺します。あなたのおかげで幸せな人生でした。本当にありがとう」
・財産配分の理由を伝える:
「長男にこの土地を遺すのは、あなたがこの家を大切に守ってくれると信じているからです。次男、長女には、この預貯金で新しい人生を豊かに歩んでほしい。それぞれの人生を尊重し、互いに助け合いながら生きていってください」
付言事項は、遺言書に必ず書かなければならないものではありません。ただし、法定相続分と異なる分配をする場合(例えば、献身的に介護をしてくれた次女に多く相続させる場合など)には、どのような想いでそのような分配にしたのか記載することで、相続人の納得を促し、紛争を予防するという事実上の効果もあります。
あなたの想いを具体的な形に
遺言書は、あなたの財産をどう遺すかという法的な側面だけでなく、大切なご家族への「想い」を伝えるツールでもあります。誰に何を遺すか、遺留分への配慮、遺言執行者の指定、そして付言事項による「心の相続」。これらを具体的に考えることで、あなたの想いが詰まった、唯一無二の遺言書を作成することができます。
私たち鈴木・五嶋法律事務所では、遺言書の内容についてのご相談はもちろん、遺留分への配慮や遺言執行者の指定、そしてあなたの想いを伝える付言事項の作成まで、きめ細やかにサポートさせていただきます。あなたの想いを形にするために、どうぞお気軽にご相談ください。

弁護士 五嶋良順
●私立栄光学園卒業/明治大学法学部卒業/慶應義塾大学法科大学院修了
●2017年弁護士登録
●第二東京弁護士会所属
●生まれ育った地元・湘南の弁護士法人に約7年間勤務。交通事故、労働問題、相続問題、離婚問題、不動産に関する問題などの一般民事や中小企業法務の経験を積んだ後、鈴木・五嶋法律事務所を開設。1件1件の事件を専門家としてテーラーメイドな対応をしていくことを心がけている。