成年後見制度がもっと利用しやすくなる? 「一生付き合う」から「必要な時」へ。

これまでの成年後見制度(法定後見)は、一度利用を始めると「原則として亡くなるまでやめられない」「後見人を途中で交代させるのが難しい」といったハードルの高さが指摘されてきました。

しかし、令和8年1月27日の法制審議会(※1)で示された改正案(要綱案)は、その不自由さを解消し、より本人の意思に寄り添う内容になっています。

今回は、これまでの後見制度の概要と、改正案で変わるポイントについて詳しく解説していきます。

※1:法相の諮問機関。その答申は法案の基礎となります。

【おさらい】現在の後見制度(後見・保佐・補助)とは?

まずは、現在の制度を整理しましょう。現在は、本人の判断能力の程度に応じて、以下の3つの類型に分かれています。

類型判断能力の状態サポートの範囲
1. 後見(こうけん)常に判断能力が欠けている全般的な代理と取消が可能
2. 保佐(ほさ)判断能力が著しく不十分借金や不動産売買など、重要な行為に「同意」が必要
3. 補助(ほじょ)判断能力が不十分特定の行為に限って「同意」や「代理」を認める

これらは非常に強力な仕組みですが、「本人が元気になってもやめにくい」「後見人が就くと一部の資格を制限される」といったデメリットがあり、利用しづらい原因となっていました。

今回の改正案でどこが変わる? 3つのポイントとは

法制審議会が出した要綱案では、上記の3分類を廃止し、現在の「補助」に一本化するとされています。この「補助」は、支援内容を一人一人のニーズに合わせて選ぶオーダーメイド方式であるため、これまでの「一律・一生」という考え方が根本から見直されています。

  1. 必要な時だけ利用できる! 「期間」と「範囲」の限定

    これまでは「一度選ばれたら一生」が基本でしたが、新制度では「遺産分割協議の間だけ」「自宅を売却するまで」といったように、必要な期間や特定の目的に絞って利用することが可能になります。
  1. 「交代」や「終了」が柔軟に選べる

    今までは、後見人に不正があるなどの特別な理由がない限り、後見人を辞めさせたり交代させたりすることは困難でした。しかし、新制度では家族が後見人になれる体制が整った場合など、状況の変化に応じて後見人をバトンタッチさせたり、制度自体を終了したりしやすくなります。
  1. 本人の「意思決定」を最大限に尊重

    これまでは、後見人が本人に代わって「代理で決める」側面が強くありましたが、新制度ではより「本人がどうしたいか」を尊重し、本人が自ら決めることを支援することが義務付けられます。

新制度はいつから始まるの?

最も気になるのは、新制度がいつから適用されるのか、という点。2024年から議論されてきたこの改正について、今後は、以下の流れで制度がスタートするとされています。

●    現在の状況:
   2026年1月、法制審議会が要綱案をまとめ、法相へ答申

●    今後の流れ:
   政府はこれを受け、2026年内の通常国会に民法などの改正案を提出する予定

●    施行時期:
   スムーズに進めば、2026年後半から2027年頃に順次スタートする見通し。
   なお、既に後見が開始している方への経過措置については、今後具体化されていく見通しです。

新制度は「オーダーメイドの後見」

高齢化に伴い、後見を必要としている方が増えているものの、制度の利用は十分に広がっているとは言えません。そんな現状を踏まえて検討されているこの新制度は、より「利用しやすい」仕組みの構築を目指す改正と言えるでしょう。

もっとも、任意後見では後見人を本人が自由に選べるのに対し、法定後見では裁判所が選任した見知らぬ弁護士が後見人になる場合がほとんどです。こうした「後見人を自分で選べるかどうか」という差は、改正によってなくなるものではありません。

判断能力が低下した後も自分の意思を尊重してほしいと望む場合は、「自分の価値観や希望を理解している弁護士を後見人にする」という選択肢があります。そのためには、元気なうちに任意後見契約を締結しておくことが重要です。今のうちから少しずつ考えておくことが、納得のいく将来設計につながります。

弁護士 五嶋良順

●私立栄光学園卒業/明治大学法学部卒業/慶應義塾大学法科大学院修了
●2017年弁護士登録
●第二東京弁護士会所属
●生まれ育った地元・湘南の弁護士法人に約7年間勤務。交通事故、労働問題、相続問題、離婚問題、不動産に関する問題などの一般民事や中小企業法務の経験を積んだ後、鈴木・五嶋法律事務所を開設。1件1件の事件を専門家としてテーラーメイドな対応をしていくことを心がけている。

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